創立者のことば

創立者のことば

創立者 初代学長 越原 春子 (昭和33年4月記)

 日本女性がながい眠りから解放された今日、それを形式だけでなく実質上の真の解放にまで到達せしめるものは、女性自らの努力によらねばなりません。自らの努力とは、まさに自分自身でそれをやりとげることであります。この意味からまず第一に指折られるものは、女性が経済的能力を持つということです。女性が消費の側にのみ廻っている時、いくら法制的に地位がみとめられても、実質的には男子の隷従物にしか過ぎません。歴史はこれをものがたっています。

 本学は、この新しい時代の先駆として、高い教養を身に纏った職能人としての女性を育成するために設立したのであります。ことに服飾文化、栄養科学の分野は女性職能に最適といえましょう。両者ながら実技は申すまでもなく、学問としても、人類文化向上のため未踏の境は果てしありません。

 多くの職能が男子によって代表されている中に、衣食の文化をつかさどる職能は、私達女性に独自のものとして完成されなくてはなりません。それを思うにつけても、とかく女性に不足がちな、ねばりと申しましょうか、不撓の努力と追究力が待たれます。本学に学ぶ学生諸姉は「不撓の努力」このことばを銘記してください。なまやさしい花嫁教育ということばを、大学にあっては返上すべきです。

 私は、こうした女性自らの力の上にうち立てられるよき妻であり、やさしい母であり、そして力強き職能人である「新しい日本の女性像」を待望しています。また、私はこの目途にひたぶるな本学がたえず楽しい学問の園であることをねがっています。おもうさえ学園が愛情と礼節の気高さの中にあることは尊いことです。創設44年をかえりみて学園訓「親切」は大きく実を結んできました。それは広義に於けるヒューマニティであり狭義の友愛であり、師弟愛であり、学問への熱情と研鑽であります。

 こうしてこの学園に生い立つ諸姉が、人間として女性としての完成を希ってやみません。