事業報告・財務状況について

I 財務の状況

令和4年度の事業活動の収支状況について、その概要を報告いたします。

 教育活動収入は、学生生徒等納付金、手数料、経常費等補助金などの経常的な教育活動に係る収入で、予算に対し1千9百万円増の40億1千5百万円となりました。主な増加科目・内容は、経常費等補助金および雑収入です。
 教育活動支出は、教職員の人件費、教育研究活動及び法人の運営に必要な諸経費で、45億8千7百万円となり、当年度の教育活動収支差額は、予算に対し8千3百万円増のマイナス5億7千3百万円となりました。
 なお、受取利息・配当金などを加えた教育活動外収支差額は3千6百万円となり、当年度の経常収支差額は、予算に対し4千3百万円減のマイナス5億3千7百万円となりました。
 また、中学・高校第一体育館の解体等で資産処分差額1億8百万円を計上したこともあり、当年度収支差額は6億1千7百万円のマイナスとなりました。以上より、翌年度繰越収支差額は6億5千2百万円、翌年度繰越支払資金は30億7千万円となりました。

II 学校法人会計の特徴

1.学校法人会計と企業会計との違い

学校法人会計と企業会計との一番の違いは、その目的にあります。企業は営利の追求を目的としていますが、学校法人の目的はそれぞれの学校の理念(建学の精神)に基づいた教育を行うことにより、社会に有益な人材を育成し還元することにあります。
企業会計では利益のためには、多額の支払を行ってもそれに見合う収益が期待できれば積極的な投資(支出)を行います。
しかし、学校法人会計では主たる財源が学生生徒からの納付金、および国や地方公共団体からの補助金に限られており、これらは年度途中で変更が困難です。そのため、学校法人会計では教育・研究の遂行という目的を滞りなく遂行するために予算が大変重要になります。

2.各種の計算書について

会計基準では、「資金収支計算書」「活動区分資金収支計算書」「事業活動収支計算書」「貸借対照表」の各計算書類の作成が義務づけられています。

資金収支計算書

学校法人の当該会計年度(4月1日~翌年3月31日)に行った教育活動やこれに付随する活動に対応する全ての資金の動きを記録することにより、当該年度の収入・支出の内容と、支払資金(現金およびいつでも引き出すことのできる預貯金)のてん末を明らかにするものです。

活動区分資金収支計算書

活動区分資金収支計算書は、資金収支計算書に記載された決算額を基に、「教育活動」、「施設整備等活動」、「その他の活動」という3つの活動区分に分けて、資金収支計算書では把握できない学校法人全体の活動区分ごとの資金の流れを把握するものです。

事業活動収支計算書

当該会計年度の事業活動収支の内容と均衡状態を明確にし、経営状況を表すものです。
資金収支計算の目的が、支払資金の収入と支出の内容を明らかにすることにあるのに対し、事業活動収支計算の目的は、事業活動の成果を明らかにすることにあり、教育活動収支、教育活動外収支、特別収支に区分され表示されます。企業会計における損益計算書に類似したものですが、利益の追求を目的としない学校法人が、教育・研究の永続的発展のため、収支の均衡を示す計算書です。

貸借対照表

期末における資産、負債、基本金、繰越収支差額を記載し、学校法人の財政状態の健全性を表すものです。

Ⅲ 学校法人会計計算書類の主な用語について

学校法人会計計算書類の主な科目、用語について説明します。

資金収支・事業活動収支計算書に共通の科目

学生生徒等納付金

授業料・教育充実費(施設費)・入学金など学生生徒から納入されたものです。収入のうち最も大きな割合を占めます。

手数料

入学検定料や証明書発行手数料などです。

補助金

国や地方公共団体などから交付される補助金です。

付随事業・収益事業収入(付随事業収入)

寮費などの補助活動収入、外部機関から委託を受ける受託研究収入、公開講座受講料などです。

雑収入

施設設備利用料や固定資産に含まれない物品の売却等による収入です。

人件費

専任教職員、非常勤講師、契約職員などに支給する俸給・賞与・各種手当などです。

教育研究経費

教育・研究活動や学生の学習支援・課外活動支援に支出する経費です。消耗品、光熱水費、旅費交通費、奨学費などがあります。

管理経費

総務・人事・財務などの管理業務や学生募集活動など、教育・研究活動以外の活動に支出する経費です。教育研究経費と同様の科目がありますが、それ以外に広告費などがあります。

予備費

予算編成時において予期しない支出に対処するために設けているものです。

資金収支計算書のみにある科目

前受金収入

翌年度分の授業料・教育充実費(施設費)などが当年度に納入された収入です。主に翌年度入学する新入生から納付されたものです。

資金収支調整勘定

当該年度の支払資金の収支には、前年度以前の活動に属するもの、翌年度以後の活動に属するものも含まれています。これらについては、活動が行われた年度への調整が必要となり、この調整に用いる勘定のことを「資金収支調整勘定」といい、「資金収入調整勘定」と「資金支出調整勘定」があります。

施設関係支出

土地、建物、構築物、建設仮勘定などの支出をいいます。建設仮勘定は、建物・構築物などを建設・製作するときの、完成までの支出額です。完成した場合に目的の科目(建物など)に振替えます。

設備関係支出

教育研究用機器備品、管理用機器備品、図書、車両などの支出をいいます。備品は耐用年数が1年以上の機械器具等で、その価額が一定額以上(本学では原則5万円以上)のものをいいます。

事業活動収支計算書のみにある科目

退職給与引当金繰入額

教職員が退職した場合には、退職金支給規程に基づいて退職金が支払われます。退職金の額は勤続年数に応じて変化するため、実際の退職金支払いに先立ち、予め毎年度に負担額を事業活動支出(退職給与引当金繰入額)として計上し、事業活動収支の均衡を維持するものです。

減価償却額

固定資産のうち建物・構築物・機器備品などは、時の経過などによりその価値が減少するものとして減価償却を行い、毎年度の事業活動支出に費用配分するものです。
※直接現金の支出は伴いません。

資産処分差額

土地・建物などを売却し、その代価が帳簿残高を下まわった場合、その差額を計上します。
また増改築で建物・構築物などを取壊した場合や、使用不能になった機器備品を除却処分した場合、処分時点の帳簿残高を計上します。 ※直接現金の支出は伴いません。

基本金組入額

学校法人が諸活動の計画に基づき、必要な資産を継続的に保持するために、その事業活動収入から組入れた金額で、第1号基本金から第4号基本金まであります。
第1号基本金 = 設立や規模の拡大・教育の充実向上のために取得した固定資産の価格
第2号基本金 = 将来取得する固定資産にあてる金銭その他の資産の額
第3号基本金 = 基金として継続的に保持し、運用する金銭その他の資産の額
第4号基本金 = 円滑な学校運営のため恒常的に保持すべき資金

貸借対照表にある科目

引当特定資産(または預金)

将来の特定の支出(校舎等施設の増改築、機器備品その他の設備の拡充や買い替え、退職金の支払いなど)に備えるため、計画的に資金を留保する場合に設ける勘定科目です。

現金預金

現金、銀行の各種預金、郵便貯金などです。 「現金預金」の額は、資金収支計算書の「翌年度繰越支払資金」と一致します。

長期借入金と短期借入金

長期借入金は、返済期限が年度末後1年を超えて到来する借入金です。 短期借入金は、返済期限が年度末後1年以内に到来する借入金です。

預り金

給料・報酬などにかかる源泉所得税、住民税など学校法人の事業活動収入にならない、他に支払うための一時的な金銭の受入額をいいます。

繰越収支差額

繰越収支差額は、「事業活動収支計算書」の「翌年度繰越収支差額」と一致し、毎会計年度の「当年度収支差額」が累積されたもので、学校法人の収支均衡状態を示す重要な指標です。ただし、繰越収支差額は、主に基本金への組入れ状況によって左右されるため、基本金の内容やその他中長期的な事業計画と合わせて確認する必要があります。